【2019年/小説・漫画】レビューってほどのものでもない記録

※過去記事です。いずれ改めて編集、更新を考えています。

こちらはほぼ自己満足の記録用記事です。つれづれと感想文が増えていきます。

ネタバレ部分はボタンで隠されているので、気になる方はクリックしてください。

(小説)井上荒野「ほろびぬ姫」

主な登場人物

主人公「みさき」 若いというよりも幼い印象の女性。しっかりものの夫に守られすぎてきたために世間知らず。
主人公の夫「新時」 教師。主人公よりも年上でいつも落ち着いている優しい男性。
夫の双子の弟「盛時」 兄とはずっと音信不通であった。兄と見た目はそっくりだが、性格や立ち振舞いは粗暴。

小説のポイント

主人公の一人称視点で話が進んでいくのだが、夫の呼び方は「あなた」。その双子の弟の呼び方も「あなた」であるのが独特な小説、

物語の冒頭は、夫が自分にそっくりな弟とともに現れるシーンから始まり、そのときはまるで主人公の混乱を共有するかのように読者も何がなんだか分からない気持ちになる。

どのあなたが夫でどのあなたが弟なのだ、と。

でも、物語が進むにつれ、「あなた」は明確に分かるようになる。

その文章の巧みさには思わず感心してしまうし、この不思議な「あなた」まみれの文章がどうにもツボに入る。好きだ。

ストーリーの概要

夫がなぜいきなり音信不通だった双子の弟を主人公の前に連れてきたかというと、「病気により余命が短い」から。

つまり、自分の代わりに双子の弟を連れてきたのだという。

もちろん、主人公にとっては夫の病気の報告も、弟の出現もあまりに突然すぎて理解が追いつかない。

しかし、これまで過保護というまでに守られてきた夫の手を離れ、少しずつ状況を理解し、同時に弟との接点も増えていき……。

最終的にどんな選択肢を彼ら3人はするのか。

ネタバレオープン

愛する人を失うとき、どう思うか、どう行動するか。

愛する人をおいていくとき、どう思うか、どう行動するか。

私は結婚していた当時、主人公のみさきのようだった。

年上のしっかり者の旦那に保護され、衣食住のなんの心配もせず、なにも考えずいられた。

それだけに夫の新時の行動はよく分かる。自分がいなくなったら何もできないに違いないと思うだろうし、そうあってほしいと思うだろう。

でも、その反面、私はみさきのこともよくわかる。

人はしたたかだ。どれほど大切な人を失ったとしても、人は生きていける。

なんとかなってしまうものなことを知っている。

そのうえで自分がみさきだったらどうするか。きっと愛する人の理想を演じきるだろう。

自分が新時だったらどうするか。命を失う直前の気持ちは想像しきれないけれど、やっぱり愛する人の理想を演じるように思う。

(エッセイ)角田光代「今日も一日きみを見てた」

エッセイのポイント

作家の角田光代さんのもとにひょんなことからやってきたアメリカンショートヘアの猫「トト」にまつわるエッセイ。

猫を飼った経験のある人なら思わず、「そうだよねー」「あるある!」と共感してしまうこと多数。猫好きみんなにおすすめしたいエッセイ。

写真もたくさん載せられていて、それを見るだけでも楽しい。

ネタバレオープン

「みくびり合う」という関係性について、このエッセイでは触れられている。角田さんは飼い猫トトのことを「どうせトトはトトなんだから」「そんなことできっこない」とみくびっていると語る。

同時にトトはトトで「わざとやってはいけないことをして自分の怒りを表し、角田さんが叱ろうとするとササっと逃げる」というような飼い主に対するみくびりをしている、とも。

そんな話からエッセイでは、恋愛関係も友情関係も「みくびり合う」ことで成立しているのではないか、という話につながるのだが、これに私はとても納得してしまった。

私たちは親しい人に対して、無意識に「彼ったらまた電気つけっぱなし!(でもあの彼だから仕方ないか)」であったり、「また彼女が迷子になった!(でもあの彼女だから仕方ないか」というようにみくびっている。

でも、みくびるということは「仕方ないなあ」と思う気持ちであり、ある種の「許容」なのだ。

仕方ないなあと言いながら、苦笑したり、可愛らしく思ったり。それだけで「みくびる」が、なんとも微笑ましいワンシーンになってしまうのだから面白い。

(漫画)成田芋虫「KILLING ME / KILLING YOU」(9/15追加)

主な登場人物

ミーティア 主人公のひとり。不死の少女。死ぬ方法を探すための旅をしている。
ユースアネイジア もうひとりの主人公。不死であり異形の存在。ミーティアと一緒に死ぬ方法を探すための旅をしている。

漫画のポイント

成田芋虫先生のデビュー作である「IT'S MY LIFE」と舞台は同じで過去の話。(前作を読んでなくても楽しめるが、読んでいるとところどころで「お」ってなる)

前作からそうなんですがギャグの塩梅がたいへん好み。

「不死になってしまった2人の主人公が死ぬための旅をする」という題材自体はなかなか暗く重たいのに、かなりギャグ要素多めにストーリーが進行していきます。

基本笑えて、たまに泣けたり、しんみりしたりできる世界観づくりがしっかりしたファンタジーものが好きな人におすすめ!

深刻な悩みを抱えているとは思えないボケボケ娘なミーティアと、頼れるツッコミユースアネイジアをはじめキャラクターにもハマる。

ストーリーの概要

あるとき前触れもなく降ってきた隕石の影響により、多くの人が亡くなってしまった退廃的な世界。

主人公である少女ミーティアはなんと頭に隕石が刺さってしまう。

その結果、家族も家もきれいさっぱりなくなってしまっている中でひとり無傷(頭にツノのように突き刺さっている銀色の隕石が取れない以外は)。

何もかも失ってしまった絶望からミーティアは家族の後を追うことを考えるも、何をやっても死ぬことはできず……。

死ぬための方法を探して旅を始めたところ、もうひとりの主人公である覆面をつけた異形の人物(おそらく男性)と出会う。

2人はその後、さまざまな生き残った人やドラゴンに出会い、ときに笑い、ときに葛藤し旅を続けていく。

ネタバレオープン

(まだ第1巻までしか発売していないので、本作のネタバレも何もという感じなので、前作との繋がりなど……)

前作IT'S MY LIFEに出てきたドラゴン「ごあごあ」の祖先や、ぬいぐるみ(?)の「ヤボヨー」の成り立ちではないかと思われるエピソードが第一巻時点であり。

前作ファンなら「!?」という驚きとともに、喜びが募ること間違いなし。

また、まだもしかしたら……という域なものの「おうち大好きおじさん」もいる……!!もしかして前作の主人公であるアストラの祖先!?

など、今後もつながりを感じられるキャラクターが続々出てきそうなのも非常に楽しみ。

以下はのちのち追記していきたいもののメモ。

(小説)伊坂幸太郎「バイバイブラックバード」
(小説)角田光代「まどろむ夜のUFO」
(エッセイ)夏野新「アダルトチルドレンの自己観測」
(漫画)成田芋虫「IT'S MY LIFE」
(漫画)岡部閏「世界鬼」
(漫画)モリコロス「のぼさんとカノジョ?」
(漫画)斎藤けん「かわいいひと」
(漫画)森生まさみ「オトナの小林くん」
(漫画)森山絵凪「この愛は、異端。」

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